合縁奇縁~女は欲張りな生き物なのです

「そうなんですか。なんだかとっても有難いお話しですね……」

どこまで本気で受け止めていいのか、迷ってしまうけど……

「施設は出来たけど、運営はまだ手探りなの。
だから、木村さんには、逐一レポートをお願いすることになるけど、そこのとこはお願いね。
遠慮なく、こういう所が困ってる、こうして欲しい、こうするべきだ、って出来るだけ具体的に改善案まで提示して貰えると助かるんだけど……」

中重さんなりに、あたしに負担感を感じさせまいとする配慮なのだと思う。

「連絡ノートに、毎日記録として残してくれればいいから、あんまり大げさに考えずにね。日々の生活の中から、問題点は自ずと見えてくると思うから」

「はぁ……」

「この託児室は、サービスではなく、福利厚生の一部なの。
社員が利用しやすく、就業しやすくあることが求められているの。
だから、変な遠慮は無用よ。
こうあるべき形を手探りでも探していくことがあたし達の仕事でもあるの。
あら、たいへん、そろそろ時間よ。
今日の裕樹ちゃんの様子は変わりない?
特に無ければ、あとは昼休みにゆっくり。
勿論、授乳に来るわよね?」

「はい」

なんか、呆気にとられ、頷いた。

「じゃ、裕子さんは、俺らと一緒に職場に戻りましょうか」

「先輩、裕樹ちゃんのことは任せてください!」

手を振る山口さんに見送られ、白石を森山と共に、あたしは託児室を後にした。