合縁奇縁~女は欲張りな生き物なのです

この社内保育室は原則、ゼロ歳児から三歳児までを託児する。

三歳児からは、比較的地元の保育園に入所することも容易になるし、幼稚園を選択する可能性も出てくる、という理由からだ。

母子の結びつきが強く、公的保育所になかなか入所が困難なこの年代までを会社の福利厚生でカバーすることによって、女子社員の離職率を押さえるという効果が期待されているのだ。

喫煙スペースを潰して作られた保育室は、ビルの南面角に位置し、明るく気持ちが良かった。

廊下はガラス張りで、中の様子が伺える造りになっている。

託児室が密室にならないように、との配慮だそうだ。

お昼寝時間や食事の時間はブラインドが降ろされ、遊戯時間はオープンされる。

社員であれば、社員証の提示で原則入室はいつでも許される。

小さな子供を身近に感じることによって、子育ての不安を解消し、子供の可愛さを体験してもらう。

昨今、社内でも問題になってきた、社員の晩婚化を解消する狙いもある。

託児室の奥には、新生児室。その横が新生児用の沐浴ルームと授乳室。その脇に小さな子供用トイレ。

裕樹は新生児なので、暫くはこの奥の部屋で寝て過ごすことになる。

あたしは実際目にしたその設備の立派さに、急に気分が重くなってしまった。