合縁奇縁~女は欲張りな生き物なのです

「ただいまぁ」

あ、雅樹が帰ってきた。

「水曜、休みとったから」

居間のドアを開けるなり、開口一番あたしに告げた。

「立会いは?」

「勿論する」

なんか、雅樹がニヤニヤしてる。

「なに?」

「いやさ、お前との電話、白石が聞いてたらしくて、突っ込まれてさ。
『こんな記念すべき瞬間に立ち会わないなんて! 課長が休まないんなら、俺が代わりに休んで付き添いますよ』って、脅された。
ほんとは得意先と重要なミーティングがあったんだがな、白石と森山が部長を連れて行ってくれることになった」

「そっか、良かった」

「いやさ、晶子は俺に出産の立会いして欲しいなんて言わなかったし、俺も端からそんなこと考えたこともなかった。
でも、お前の出産には立会いたいなって。
俺も勝手だな。
たいして役には立たんと思うが、側にいていいか?」

「うん。雅樹に側にいて欲しい」

雅樹があたしを後ろから抱きしめる。

そして、

「裕子、愛してる。幸せになろうな、三人で」

あたしの肩に顔を埋め、身体に響くように囁いた。