「まずリビングから片付けましょうか?」

本当に仕事のし甲斐がある部屋だ。
室内を見回して頭の中で手順を組み立てる。見ていない他の部屋もきっと惨状なのだろう、家政婦業に就いて3年の腕が鳴る。

「あぁ…どうしようかな…」

壁に寄りかかって暫し天井を眺めて考えていた雇い主は、視線を下ろして私に向けると苦笑した。
何てことはないそんな仕草も、モデルか芸能人かなルックスな人がすると様になるもんだと感心する。

「鈴野サンに任せるや。確かにココ、何日かしたら客を通さなきゃならないし」
「今日中に終えます。場所を変えない方が良い物はありますか? 洗濯とゴミの分別はしても良いですか?」
「あぁ、うん…」

荷物を詰めたカバンの中からエプロンを取り出し身に付けながら、歯切れの悪い雇い主を見遣った。

「不都合があれば仰ってください」
「いや…鈴野サンってさ、いくつだっけ?」

重ねられた言葉に口の中で溜息を転がす。
中学を卒業してすぐ、働きに出た。この仕事に就けたことは幸運だと思い、励んでもきた。けれど頑張っても頑張っても、年の若さから信用が薄いのも確かだ。