君に染まる(後編)



少し駆け足で階段を降り、靴を履いてドアノブに手をかけた時。



「未央」



名前を呼ばれ振り返ると、そこにはお兄ちゃんがいた。



「あの…さ……」


頭をかきながらそうぼそっと呟いたかと思うと、そのまま黙り込んでしまった。



「…何?」


先輩を待たせていることに焦り、少しせかすように尋ねる。



「あ…その……もしアイツに泣かされたりしたら、すぐ兄ちゃんに言うんだぞ」


「え?」


「あと、少しでもアイツを嫌いだと思ったらすぐ別れろ。アイツにも失礼だからな、うん」



1人で納得するお兄ちゃんに、小さなため息をつきながら肩を落とすと、ハッとしたように口を開いた。



「あ、いや……まあ、でも……できるだけ、仲良く…しな、さい……」



恥ずかしそうな悔しそうな、なんともいえない表情を浮かべる。




少し笑いながらも「はい」と言って「それじゃあ…」と言いながら今度こそ扉を開けようとすると、

「あ、それと…」

と、また止められてしまった。



「いや、それとじゃないな。そんなついでみたいな言い方…」


少しブツブツと呟くと、コホンッと咳をしてあたしを見つめたお兄ちゃん。




そして、優しく笑った。







「…生まれてきてくれて、ありがとう」







満足そうにするお兄ちゃんに一瞬目を見開いたけど、すぐに笑顔を浮かべ、



「うん…」



そう返事をした。