手を重ねることは何度かあっても、
手を繋ぐことはあまり無い気がした。





いわゆる"恋人繋ぎ"をしているあたしと創吾先輩はピアノ教室までの道を歩いている。


精一杯の勇気を振り絞って気持ちを伝えたからだろうか、先輩はものすごくご機嫌。

今にも鼻歌を歌いそうな雰囲気でデートの予定を立てている。



「やっぱ映画か?それともまた遊園地とかでもいいな」



女性慣れしているとはいえ、
先輩にとって誰かと付き合うこと、誰かとデートすることは全てあたしとが初めて。

その上財閥の御曹司なので一般的なデートというものがよく分からないらしく、
あたしだって詳しくないものだから2人でいろいろと考える。

けど、今まで過ごしてきた環境が違うせいかまったく結論がでない。





「別に浮かばねぇってわけじゃないんだけどな。
俺の行くような場所じゃ未央がかしこまるだろ」

「うっ…ごめんなさい…」

「謝んな。お前が悪いわけじゃない。
ただ俺が、普段未央が行くような場所に行ってみてぇだけだし」



さらっとそう言われ、思わずうつむいた。

どうしてそこまで…。





「未央は音楽好きだからそっち方面でも…」

「あの…」

「ん」




「先輩は…その…あたしのどこを…その…気に入った、というか…」



「あ?」



「あのっ…だからっ…つまり…す、好きに、な、ったんで、しょう、か…」



地面に視線を固定したままそう言った。


ずっと疑問だったことで、ずっと聞いてみたかったこと。

先輩に同じことを聞かれた時はあやふやなことしか言えなかったくせに、
同じことを質問するのはどうなんだろう。


それでも…やっぱり気になる。



どんな答えが返ってくるんだろうとドキドキする暇もなく、
先輩はすぐさま口を開いた。