結局、店に引き返したのは家に着いてからだった。
しかも玄関の前に車をつけ、ドアをあけても降りようとしない俺を見た畠山が察してのことだ。
本当に情けない。
どこまで憶病なんだ俺は。
「坊ちゃん、車で待たれては?」
店の近くで停車した畠山は車を降りだした俺にあわてて声をかける。
「いや…店の前で待つ」
「ではせめて上着を。3月とはいえ夜は冷えますから」
いつも用意しているのか車の中から上着を取り出し渡してくる。
「さんきゅ…」
「私は少し離れたところにあったコインパーキングに駐車して待っていますから。未央様が出てきたら連絡してください」
「分かった。………その…手間とらせて、悪かった、な」
「いえ、お気になさらずに。では」
まったく気にしてない様子の畠山を見送り店の前のガードレールにもたれかかった。
迎えに行けと美紅には言われたが、もう1度あの空気の中にずかずか入っていく勇気は今の獅堂創吾にはない。
獅堂創吾は、今とんでもなく腑抜け野郎だ。
店の中から聞こえてくる楽しそうな笑い声を耳にしながら深呼吸をする。
…とりあえず未央が何か言いだす前に言い訳をしよう。
さっきは悪かった、仕事が忙しくて精神的にまいってたんだ…とか。
俺が言ったことは忘れて、全部嘘だから…とか。



