『そもそも、あんたと一緒にいて不幸になるかを決めるのは未央ちゃんだし、そのことで未央ちゃんが離れていったとしてもその時はその時。あんたが気にしたってしょうがないでしょ。もう1度口説けばいいじゃない」
「口説くって…そんな簡単に言うなよ」
『どうして?獅堂創吾なら得意中の得意でしょ?それよりも!今未央ちゃんを不安にさせてるこの状況をどうにかしなさい』
「不安?って…なんのことだよ」
盛大なため息が聞こえてくる。
『ホント…バカ。ホントに自分のことしか考えられないのねあんた。いいから今すぐ未央ちゃん迎えに行きなさい』
「迎え…」
『いい?私は迎えに行けって言ってるの。嫌がる未央ちゃんを無理やり連れ戻しに行けって言ってるんじゃないんだからね。じゃ』
制止の声をかける暇すらなく電話は切れた。
迎えに行けと言われても…。
「今顔合わすの…つらすぎ、だろ……」
美紅が言っていた「未央の不安」というのはおそらく俺が別れを切り出そうとしたことなのだろう。
突然のことで未央が動揺するのは分かる、けど俺だって口がすべったと後悔している。
俺の中に微かに存在していた「別れる」という選択は、未央の中には存在などしていなかったものだ。
でも、俺が口にしかけたことで未央の中にもほんの少しのかけらとして形を成してしまっていたら。
俺には行動にうつす度胸はないが、未央にはきっとそれがある。
「創吾先輩が、そうしたいのなら…」と…そう言いだしかねない。
もしもそうなったら俺はちゃんと「嫌だ」と言えるだろうか。
俺を引き合いに出したとはいえ未央の口から「別れる」と言われ、こんな精神状態の中はっきりと「別れたくない」と言えるんだろうか。
情けないことに、決断するのに少し時間がかかった。



