「…店でも開くの?」
バレンタインデー当日の放課後。
いつものベッドルームでげんなりしている俺に、部屋に入ってきた優が開口一番に言い放つ。
「んぁ…」
窓際のソファーに座り天井を見上げ目を閉じていた俺は、声にならない声を発しながら横目で優を見やった。
目に映った優は昨日より少しやつれていていつも以上に覇気がない。
「…そのセリフ、そっくりそのまま返してやるよ」
同情と嫌みの念をこめそう言った俺は、再び目を閉じた。
朝から俺の周りはチョコの匂いが充満している。
それと同じぐらい、女達の熱気も充満している。
正直、今年は最悪だ。
チョコの数も熱気も今までで一番ひどい。
本命がいれば女達も諦めるかと思っていたが、どうやら火に油を注いだみたいだ。
「彼女のよりも私のチョコを!」なんてバカなことを言いながら渡してくる女達ばかりで、はね返す気力すらわかなかった。
なぜそこまで必死になれるんだろうか。
そもそも、チョコを渡したくらいで心変わりするような想いならとっくの昔に未央とは別れている。
そんなことにも気付かない奴らのせいでこんなにも体力を消費したかと思うと腹が立ってしょうがない。



