君に染まる(後編)



再び雑誌へ視線を戻した美紅に特にお礼も言わず、未央のいるピアノルームへ足を向けた。





扉を閉めてしまえばまったく音の漏れないピアノルーム。

ドアノブを捻りゆっくりとドアを開けると、微かにピアノの音が聞こえてきた。



音を立てないよう静かに部屋に入ればピアノを弾く未央の後ろ姿が目の前にある。

俺に気付いた様子はまったくなく、ピアノに集中している。

演奏を止めるわけにもいかないので、どうせならと耳を傾けた。






…やっぱり未央のピアノは好きだ。



小さい頃からいろいろなピアノ演奏を聴いてきたけど、未央の奏でる音色が一番落ち着く。


未央だから、と言われればそれでお終いだ。

けど、未央の人間性からくる演奏だと言えば誰しもが納得する優しい音色だろう。






しばらくの間聴き惚れていると、未央の様子がおかしいことに気付いた。


手を止めてはため息をつき、再び手を動かす、を繰り返している。





「調子悪いのか?」
「!?」



無意識に声をかけてしまい、ヤバいと顔をひきつらせた。

案の定ビクッと反応した未央は、硬直した体をギギギッと動かし振り向いた。




「あ…先輩、ですか」


俺の顔を見た瞬間体の力がスッと抜け、ホッと息を吐いている。