「別に……………でもさ、今年はちょっと違うんじゃない?」

「あ?」

「今まで創吾くんがバレンタインを嫌いだったのは甘いものが苦手っていうのもあるかもしれないけど、
好きな人がいなかったってのもあるんじゃない?」

「だからなんだよ」

「だから、今の創吾くんには未央ちゃんがいるでしょ?
未央ちゃんからチョコもらいたいと思わない?」

「っつったって、たかがチョコだろ?もらったからってなんになるっつーんだよ」

「それは創吾くんが好きな子からチョコをもらったことがないからだよ。
好きな子からもらうチョコの喜びはいくら創吾くんでも味わったことないと思うよ?」




どうしてこいつはこんなに上から目線なんだ。


卓の態度が若干頭に来たけれど、やっぱりバレンタインの習慣は理解できない。




「甘いのが苦手ならビターとかもあるんだしさ、美紅ちゃんに頼んでそれとなく未央ちゃんに伝えてもらえば?」

「なんでそこまでしてチョコ食わなきゃなんねぇんだよ」

「だから気持ちの問題だってば。未央ちゃんからチョコもらえたらきっと飛び上がるほど嬉しいと思うよ?」

「飛び上がるほどって、お前…」

「それに、手作りだと思うし…?」



含みのある言い方に無意識に反応してしまった。


今まであぐらをかいてうつむいていた俺が俊敏に顔をあげたのを見て、卓はたまらず吹き出した。



「…弱いよね、手作りって言葉に」

「…男はみんなそうだろ」

「そうかな?個人差はあると思うけど?」

「…」



なんだか今日は卓に主導権を握られている気がする。


まんまと一杯食わされた気分になり、あぐらをかいている足に頬杖をついて不貞腐れたように唇を突き出した。