あたしは
先生の背中から
離れたくなかった。
先生の背中
大きくて広い
男の人の背中。
あたしには
パパの背中もママの背中も
記憶がない。
あたしが彼らの背中を必要としていた頃
彼らはそれぞれの仕事がとても忙しく
そんなことをする気持ちも時間も
持ち合わせてはいなかった。
それなのに今になって
学校のことや成績のことで
あたしにかまおうとする。
あたしはずっと違和感を感じてる。
うちの中の異星人。
間違った場所に
たまたま入り込んだ
どこかの家の子。
どれくらいそうしていたのだろう。
リュウイチ先生が
振り向いた。


