『マミはお嬢様やから先生を下の名前で呼ぶの慣れてないんですわ。別にいいですよね?』
また小塚が余計なことを言う。
でも言ってることは正しかった。
そんな話をしたわけじゃないのに
小塚はなぜかあたしの気持ちを
見抜くことが多かった。
『ああ、別にかまわないよ。僕の名前はリュウイチだし、そう呼んでる子も多いからね』
木崎先生はそう言って
にこっと笑った。
先生の笑顔は
凍てついた氷の心を
またたくまに溶かしてしまう
魔法みたいだと
あたしは思った。
『それでいいか、坂下?』
先生の笑顔に見とれていたあたしは
急に話をふられて
どきどきしてしまう。


