『じゃあ今日はここまでにしておきます。明日と明後日はお休みで、月曜から合宿ですからね。また向こうでみっちりやりましょう』
『はーい』
まるで小学生のように
このクラスの生徒は素直に返事をする。
たぶんみんな
木崎先生の人柄に
いつの間にか取り込まれてしまうんだと
あたしは思っていた。
この真光塾のほとんどの子たちは
木崎先生のことを
「リュウイチ先生」って呼んでたけど
あたしはなんとなく気恥ずかしかったから
そうやって呼んだことがない。
木崎先生だけじゃなく
今まで生きてきて
どの先生のことも
下の名前で呼んだことなんかなかった。
『それじゃあ気をつけて帰ってくださいね』
みんなバラバラと帰りだす。
あたしは先生に質問があったので
教室に残っていたら
小塚が声をかけてきた。