『えーっと、以上のことからこの問題の答えはY=2(a+b)となります。ちょっとややこしいかもしれないけど、わかるかなー?』
いつものように木崎先生は
一問ずつじゃなく
一ステップずつ生徒の顔を見て
授業を進めていく。
数学が大の苦手だったあたしが
三年一学期の通信簿で
5段階評価の4だったのは
完全に木崎先生のおかげ。
木崎先生の授業は
数学っていうお堅い科目なのに
どこかやわらかみがあって
聞いていると心地いい。
話し方も穏やかなんだけど
テンポが良くって
いつの間にか授業内容に
引き込まれてしまう。
いつしかあたしは
真光塾での数学の時間が
その頃の生活の中で
何よりも好きになっていた。