……言葉が、出なかった。
人を、女を、これほど美しいと思えたのは、初めてだったんだ。
儚いまでに美しい。
今にもこの風にさらわれてしまいそうなほどに。
彼女はか細かった。
“さああああ”
吹き上げた風が、一度地面を埋めた桜の花びらを飛ばす。
また視界を遮る、桜の嵐。
「………」
開けたそこには、もう誰もいなかった。
―――これが俺・溝口 潤(ミゾグチジュン)が
彼女、笠井 美桜(カサイミオ)を見つけた日。
俺が、初めての恋に落ちた瞬間だった。
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