セレーンの祝福


「いや、何も。それより、城内はどうだった? 」

強引に話を変えたことで、彼女は不満そうだったが、その隠れてもいない表情にイサは噴き出した。

「え、どうして笑うんですか??」

「いや、何でもないよ。明日は街におりてみようか。案内しよう」

今度は嬉しそうな顔。

見ていて飽きない子だと思いながら、何処かで怒りがすっと消えて行くのを感じる。

「……あの…余計なことかもしれませんけど…。辛い時は落ち込んでもいいんです。ひとしきり落ち込んだら、また頑張ればいいと思います」

躊躇いながらも、彼女はゆっくりとそう言った。

師匠の受け売りですけど!

そう笑って。




茂る木々の葉が、沈みゆく夕日の光を受け、輝きを取り戻していく。

そんな気がしていた。