「彼氏は……もういいかな。」


「さっきとえらい違うじゃねぇか。」


「うん。まー……今は少しでも会社の役に立ちたい。」


「ふーん…。じゃ、帰るわ。」


「今日はありがとう。」





ニヤリと笑い、手をヒラヒラと振って幸くんは帰って行った。





「ありさちゃーん、幸くーん。」





幸くんと入れ違いで、お母さんが部屋に入って来た。





「あらぁ?幸くんは?」


「今帰ったよ。」


「えぇー、ママが作ったパウンドケーキ食べてもらいたかったのに…。」


「今度、幸くんに持って行ってあげるよ。」


「まぁ!そうしてくれる?ありさちゃんも降りてらっしゃい。今日のは一緒に食べましょう!」




パタパタとスリッパを鳴らし、お母さんは階段を降りて行った。





今年、43歳の誕生日を迎えたお母さんはとても年相応に見えない。




童顔なのは知ってるけど、童顔にもほどがある。





お母さんなんだけど、お母さんと思えない時もしばしば。





でも、お父さんの会社やパーティーに出る時は一歩下がり夫を立てるいい奥さん。





意外としっかりしてたんだなって思った。