求愛ラバーズ

ニヤニヤと笑う陽介にバーテンダーは苦笑した。





「いつも機嫌悪いじゃないですか。」





会話の間で注文を聞かれ、それぞれ頼んだ。





「宗士さんでいいですかね?」





いきなり名前を言われ驚いてしまった。





「陽介さんがよく話してくれるんですよ。」


「そうなんだ。」





目の前のバーテンダーは手際よく注文したものを作っていく。





陽介が会社の人の弟って言ってたから年下なんだな。





人懐っこい笑顔を浮かべている。




「貴久、チカの電話通じないんだけど。」


「さっき電話で話したんすけどね。」





チカって………女?





「お前、女呼ぶのか?」


「は?………ああ!チカ?ちげぇよ。基親って言って、会社の奴でコイツの兄貴。チカって呼んでんだよ。」





チカって言うから女かと思った。




目の前に鮮やかなカクテルが出され、一口飲もうとグラスを近づけたら、激しくドアの開く音がした。





バーテンダーの貴久くんはあからさまにため息を吐く。





「煩くなります。すいません。」