求愛ラバーズ

「おう、先に一杯………顔色わりぃぞ?」


「ああ……。」





ドアを開ければガヤガヤと賑わう店内。





カウンターに座る奴を見つけ、近寄ると俺に気づいて振り返った。




「まぁいいや、ビールでいいだろ?」





隣に座った俺に聞いてきた奴は返事も聞かずにさっさと注文した。




「お前なんで真っ青なわけ?」


「さっき、衝撃的瞬間を見た。」


「はぁ?」





煙草の紫煙を吐き出す奴、甲斐陽介は高校の同級生で、お互い就職しても都合が合えば度々飲んでいた。





「女って怖いよな…。」


「んだよ、いきなり。」





眉間に皺を作る陽介にさっきの事を話した。





俺の想い人という事は省いて。





「はっははは!すげー女!」


「凄いけど、怖いだろ?」


「まぁな。その女見てー。」





こいつに見せたら大変な事になる。





29にもなって特定の彼女は作らず、色んな女と関係を持ってるんだから、葛城さんにも絶対手を出す。





「てかさ、その男って彼氏なんじゃね?大方ホテルから知らない女と出て来たところを見て蹴り入れたんじゃね?」