「あっ、幸くん!」





幸くん?





葛城さんと同じ方を見てみると………戸高さん?





「ありさ……幸くん言うな。」


「いいじゃん、幸くんは幸くんだし。」


「恥ずかしいだろ。それにここは会社だぞ?戸高さんと言え。」


「はいはい。」


「……ったく。」





眉間に皺を寄せたまま、戸高さんは向かいの席に座った。





「あっ、お前女子社員に毒吐いたろ?」


「お喋りが過ぎるから嫌味言っただけ。毒なんか吐いてない。」


「気にすんなって言ってんだろ?」

「わかってるけど、ああいう女見てるとイライラすんのよね〜。噂話だけが生き甲斐みたいな?仕事もろくにしないで男漁りに来てるみたいじゃん。」


「俺がフォローするからお前は黙っとけよ?」


「わかったってば。」




先行くね、と葛城さんは席を立ってしまった。





俺は口を開けないでいる。





戸高さんと葛城さんってかなり親しくない?





2人の噂も耳にしたけど、これは否定出来ないよな。





しかも名前で呼び合う仲みたいだし……同じ会社に勤める社員でも名前で呼んだりしないだろ?