「迷惑だってことくらいわかれよ。注意されて逆ギレとか反抗期かお前は」

「なんだてめぇ。ぶっ殺されてぇのか、コラ!」

「死ぬのはお前なんだけどな」
少年は小さくつぶやく。

「山本ぉ、そんなやつやっちまえよ!」
座っている若者のうち一人が声をかけてきた。

「あぁ、ムカつくからボコボコにしてやるよ」
山本と呼ばれた若者が少年の胸倉をつかんだその瞬間。

いつのまにか山本の体は宙に浮いていた。
そしてそのまま地面に落ち、石畳に背中を打ちつけた。

「ガッ、うぅ…」
何が起きたかもわからずもだえ転がっている山本を一瞥してから振り返り、

「大丈夫ですか?」
と少年が三人の女性陣に言った。

「はい、ありがとうございました。」
まず中年の女性が礼をいうと、次に二人の少女が

「来夢」
「黒河くん」
とほぼ同時に少年の名前を呼んだ。

「ん?」
少年は二人の少女をまじまじと見てハッとしたように
「香奈と…永島さん?」

どうやら三人は知り合いのようである。