普段から開放されている屋上の扉を開けて冷たい風が吹く中に進んで行った。寒さにはなれていてこの程度なら大丈夫なのだ。乗り越えられないような高いフェンスが張り巡らされていて飛び降りり自殺を警戒してるのが手にとるように分かる。


「千明」


優しい声が聞こえた。わざわざ扉の鍵を閉めなかったのは追いかけてくれると知っていたからだ。優しい優しい彼が放って置くなど出来るはずがない。


「嘘つきは嫌い」
「、知ってる」
「なのに蒼衣は嘘ついた」
「ごめん、じゃ許されるとは思ってないけど、ごめん」
「謝らないで」


欲しいのは真実。嘘で隠したその真実を知りたいのだ。言いたくないなら、それで良い。ただ、嘘をつかれたくないのだ。


「情けないな、震えてるよ俺」
「言いたくないなら、」
「違う」
「・・・意味分かんないんだけど」

「言ったら現実味が増すみたいで怖いんだ」



そう言って笑った蒼衣の顔はどこか哀しげに歪んでいた。