「なんか、変に痩せてる」
「お、良く分かったな。ダイエット中」


嘘だ。直感で分かった。長年の勘、というのか、きっとこの感覚は私だから分かったと思う。自惚れではなくて本当に。なんだかムカッときて、思わず頬を掌で殴ってしまった。


「嘘つきは大っ嫌い。今日は一人で帰るから」


ざわついていたクラスが静かになったのが分かった。「殴った」「あいつが蒼衣くんを殴った」「最低」「有り得ない」コソコソと聞こえる声は女子ばかりだ。


「ははっ、千明には敵わねぇなー」


何言ってんの、そのセリフは私のだよ。何をしたって貴方には敵わないのだから。赤くなってしまった彼の頬を見て罪悪感はあるものの嘘が嫌いな事を知っているくせに嘘をついたのが悪いのだ。本当の事話すまで話さない、と決めて自分の席につく。


「ああ、皆気にしないで話してて! ただの喧嘩だからさ」


「う、うん」とぎこちなく数人が返事をして、またざわざわし始めたクラス。いっそあのまま黙ってればいいのになんて思ったが口に出さないようにぐっと拳を握り締める。


「千明、ごめんって」


近くに寄ってきた蒼衣をかわして颯爽と教室を出た。色んな事が重なり不機嫌は絶頂まで昇りきっていたのだ。