-昭和20年。夏-


「や~い。親なしッ子」

一人の少女を数人の子どもが取り囲み、石を投げていた

「いっ…痛いよ…やめて」

少女の悲痛の叫びも虚しく、いじめ続ける

そこに一人の男がやってきた

「こらー!!やめんかっ」

「うわっ!菅だっ。逃げろ!!」

あっという間に男と少女だけが残った

「大丈夫か?信」

「…」

信という少女は下を向いたまま喋らなかった

「屋敷に戻るぞ」

信は小さくうなずくと歩き出した


―菅孤児保護施設―

それが屋敷の名前だった
木造建てのどこにでもある普通の建物
その中に数百人という子どもたちがある

「あっ!!信だッ!!」

この家の子どもが歩み寄ってきた

名前は栗山千里
信と同じ年齢ぐらいの少女だった

「…ただいま」

「遊んぼーよ!!今ね、積木してんだよ」

「…」

千里は手をひっぱり遊んだ


心ない一言や親のいない寂しさはあったものの

この施設があるおかげで安らいだ

とても幸せな時間だった