私は電車を降りると、坂の上にある空き地を目指して走っていた。
走りながら今までのことを思い出していた。
初めは私の片思いだった。
理沙と隆平さんが付き合いだして、縮まった日向先輩との距離。
その距離が近づくにつれて私は自分の欲を抑えられずにいた・・・一緒に帰ったりしてるのを早苗さんが知ったらどう思うんだろう・・・私が早苗さんの立場だったら・・・きっと嫌だと思う。
だけど・・・日向先輩に笑って欲しかった・・・日向先輩の笑顔が見たかった。
私だけに向けられるようになる笑顔が本当に嬉しかった。
キスも・・・ビックリしたけど・・・嫌じゃなかった。
日向先輩にしたら魔が差しただけなのかもしれない・・・でも、それでも良かった。
早苗さんと付き合っている以上はこの気持ちは伝えてはいけないと思っていたから・・・。
・・・だけど・・・もう・・そんな我慢はしなくてもいいんだ・・・受け入れてもらえないかもしれない・・・もう、こんな関係に戻ることさえ出来ないのかも知れない。
・・・怖い・・・だけど・・・気持ちを伝えたい。
一緒にいて思った・・・気持ちを伝えていない私はそこから動けない。
どんなに心で思っていても、相手には伝わらない・・・ちゃんと自分の言葉で伝えなくちゃ。
私の心臓は走っているのと、これから自分でしようとしていることに爆発しそうなほどドキドキしていた。
坂の上につくと・・・日向先輩の後ろ姿が見えた。
私は呼吸を整えて・・・・一度深く深呼吸をした。
そして-------
「日向先輩」
好きな人の名前を呼んだ。



