お母さんが運転する車内では、一言も言葉を交わさずに帰宅した。 自分の部屋へ向かおうと 階段の手すりに手をかけたとき、 「愛音ちゃん。お母さんは応援してるから!やっぱり国立大学よねぇ。ウフフ」 黙ってうなずくと、駆け足で2階に上がる。 部屋のドアを後ろ手で閉めると、そのまましゃがみこんだ。 ドクドクと鼓動が早くなっていくのを感じる。 《今度こそ駄目…》 拳にぐっと力をこめる。 唇をキュッと噛みしめると目頭が熱くなっていくのがわかったが、 涙を必死で抑える。