『でもね、私が早坂君と話したかったのはそのことじゃないの。
サキがね、気にしてるのよ。ずっと……。
あんな逃げるみたいに自分が突然いなくなってしまったこと。
なんの話し合いも持てなかったこと。
早坂君が自分を責めてないかってこと。
早坂君がもし自分のせいだと思っていたなら、それは違うってこと』
それって……
サキさんはまだ早坂さんのことが好きなんじゃないのかな。
『勝手なこと言ってんじゃねーよ、あいつ…
サキと話がしたい。
会ってきちんとしたい。
どこに行けば会える?』
―ドキィンー
『会うのは難しいわ。
サキに自由なんてないもの。
でも……そうだ!うちに帰ってくる日があるの。少しの時間だけど』
―ドックン、ドックン―
心臓が激しく脈うつ。
時間が止まったままの私は置き去りで、再会の約束はとりつけられた。
ついにこんな日がきてしまった。
約束の日がこわい。
いったいどんな話をするんだろう。
私たちはどうなっちゃうんだろう…――。
カフェを出ると、早坂君変わったね。って梶山先生がポツリと呟いた。
私にはなんのことだかわからなかったけど、早坂さんはこいつのおかげって頭に手を乗せてくれた。
その言葉をどんな風に受け取ればいいのかわからない。
不安はつのるばかり。
だけど、再会することで早坂さんの気持ちが楽になれるのなら。
私は信じて待とう。
それしかできない。