「あぁ…わかったよ。 行くよ……」 ナースステーションからの視線が俺の背中を突き刺す。 俺は、中田さんとその家族に、 ‘船酔いみたいなもんです。大丈夫です’ってことをバカ丁寧に説明した。 こんなことイチイチ誰が説明しにくるかよ…… 病室を出る際、愛音と目が合った。 満面の笑みで俺に微笑むと、‘アリガトウ’って口パクしてきた。 これで満足か? 頭をポンてしてやりたかったけど、さすがにここじゃまずい。 俺は‘バーカ’って口パクを返してやった。