吉井君を屋上に呼び出した…――。





『兄さんに言われたよ。

諦めろって……

早坂さんて、兄さんの同居人だったんだね』





「吉井君、わたしが優柔不断な態度をとっちゃったから。

吉井君だって傷ついてたのに。

甘えちゃいけなかったのに、ごめんね……。


でも、やっぱり私は早坂さんが好き。


もう止められないの。

だから、吉井君と同じ大学に行くことはできない。


ほんとーにごめんなさい」





『兄さんに聞いたんだね。俺と梶山先生のこと…』





「うん。でもね、私思ったんだ。

お兄さんは吉井君が裏切ったって言ってたけど、吉井君にだって何か理由があったんじゃないかって……


あんなに優しい吉井君が理由もなしに彼女を見捨てるわけないよ…」






澄みきった秋の空を見上げながら吉井君が呟いた。






『俺たちね、2人でどこかへ逃げるつもりだったんだ。


だけど、約束の日、“別れよう”ってメールが届いて……。


ミキは姿を見せなかった。
それきり話してない。

真相はわからない。


だけど、聞く勇気も、すがる勇気もなかったんだ。


どの道、多くの人との関係をきった中で生きていかなきゃいけない。


そんな生活、不安だったんだ。

こわかったんだ。


兄さんの言うとおり、裏切ったっていうのは当たってると思うよ。

だから、罰ゲームだってのったんだ』