「俺の仕事ってさ、いつ休めるかなんてわからないし、誕生日やらクリスマスでさえ一緒に過ごせるかわからない。
突然の院外コールだって鳴る。
そんなんでいいのか?
やっぱり、大事にしたいだろ?そういうことは。」
少し考えてから呟くあいつ。
『他の人とは幸せの域値が変わるだけですよ。
誕生日やクリスマスを一緒に過ごせたらラッキー♪って思います。
会うのが難しいから、会えたときは短い時間でも凄く貴重なんです。
だから私はずっとドキドキしっぱなしですね』
そう言ってニコッと笑うあいつ。
参ったな……。
かわいい。
頭にポンと手を乗せる。
「そして俺はかっこわりぃ男だぞ?
たぶん、おまえが思ってるよりずっと…」
『えっ!?どーいうことですか?』
そんなハズない、って抗議するあいつだけど、ホントそうなんだ。
海の更衣室で会ったとき、俺だって嬉しかったんだ。
目の前でビキニの紐たらして真っ赤な顔で必死に隠してる姿を見て、なんも思わねーわけないだろ。
だけど、
あの日に気付いたんだ。
こいつのことマジで好きなんだ、って。
手を出せなかった。
それまで手を出していた自分が、どーやっていたのかわからない。
どーしてそんなことができたのか、わからない。
情けない。
緊張でカラダが固まったんだ。
彼女でもないのに俺が手を出したらダメだと思った。
大事だと思った。
心の底から大事にしてやりたいと思った。