「私ね、慌てて家を出てきたの…そしたらね、 ノートもペンも、何も持ってきてなかった…」 吉井君は少し考えてからこう答えた。 『じゃあ今日は勉強はやめよう。』 「えっ!いいよ。私、本借りて帰るよ。勉強の邪魔しちゃわるいし…」 『だめっ!』 吉井君の大きな声が資料室いっぱいにこだまする。 「ど、どうして…?」 『いや、ごめ、ん…大声だして。でもごめん!帰らないで!』