『この話……。
誰にも言ったことないんだぜ?
‘俺は大丈夫だ’ってどっかで虚勢を張ってたのかもな。
俺には新しい許婚相手がいるんだ。
でも、俺こんなだからさ、彼女をかなり泣かせたんだよね。
もうそろそろケジメつけなきゃなーって、思っていたんだ。
君にさ、こんな風に話しを聞いてもらえて、なんだかスッキリしたよ。
ひとりで抱えきれないで暴走しちまうくらいなら、もっと早くに誰かに聞いてもらうべきだったよ』
「誰にも話さなかったのって……それって、吉井君や、前の彼女を守っていたからじゃ、ないですか?」
『さぁ…、そんなにかっこいいもんじゃないと思うぜ?
今でも、旬との関係を知ったとき、力ずくで彼女をうばいに行ってたら、今頃は何か違ったのかなぁ、とか考えちまうし…
女々しいだろっ!』
そう言って、お兄さんはやんわりとした表情を浮かべた。
優しい目。
こんな風にも笑うんだぁ。

