兄*吉井 晴人・・・24歳。
別にピアニストを目指しているわけではないし、パーティーやらで少し弾ける程度でよかった。
だけど
自分たちはこのレッスンで知り合えたわけだし、日常に繰り返してきたわけだから、今更やめる気も変える気もなかった。
ピアノのレッスンは週に1回、兄弟は各30分ずつ行われていた。
最初に兄(晴人)……続いて弟(旬)。
「旬!!おまえ最近、ずっと同じ曲弾いてるんじゃねーか?
新しいの練習しろよ」
レッスンの換わり際にひとこと。
『うん。そうだね……』
旬はうつむきながら
そう答えると、ピアノ部屋へ入って行った。
なんとも思わなかった。
兄弟のなんてことない普通の会話。
だけど
この日は妙な胸騒ぎに襲われた。
静かすぎる。
いっこうに鳴らないピアノ。
聞こえてこない声。
―ガチャリ―

