吉井家を後にする。



さっきまでの豪雨は嘘みたいで、きれいな夕焼け空が広がっていた。





雨の残り香が漂う中、トボトボ歩く。






吉井君は“家まで送る”と言ってくれたが、それは断った。





もう、吉井君には甘えちゃいけない。





吉井君だって、まだ向き合わなくちゃいけない問題がある。






私が傍にいては吉井君だって前に進めない。






そんな気がした。





《―プップ―》





クラクションの音。






背後には真っ黒な高級車がシルバーのエンブレムを誇張させながら近づいていた。






『乗ってく〜?親父の車借りたんだ』







「お兄さん!!!」







吉井君のお兄さんが窓からヒョイと顔を出している。






「けっこうです。歩いて帰りますから」






『その格好で?』






………!!!!////