―ガチャン―





勢いよくドアが開いた音がした。





もう、誰に見られたっていいや。






どう思われたっていい。






いちばん好きな人に嫌われるより辛いことなんてないから。





狭く重い空間から早く抜け出したくて“待て”と制止する早坂さんの腕をすり抜けようとした。




だけど…

私の小さな抵抗は、たくましい腕にすぐさま止められる。






『俺が先行く』






いらない。





そんな優しさいらない。






私って迷惑なやつでしょ?




こんなバカな子、大事にしないで。





『おいっ!!

テメー!何してんだよー!!!』






吉井君…!?





いきなり私の目の前で殴られた早坂さん。





すぐに駆け寄りたかった。




だけど…

そこで早坂さんに触れてしまったら…

あの甘い感触を思い出してしまったら…

私はもう断ち切れなくなると思った。





これで終わりにしよう。





これ以上、依存してしまったら…

取り返しのつかないことになる。





私は心の中で、早坂さんの後ろ姿に“サヨナラ”を告げた。




―あの日end―