カフェを出る




『じゃ、夏期講習!!
頑張ろうね!!
毎日だからね!!気合いを入れて…!』









「うっ…うん。わかったよ…。よろしくお願いします。」







運動不足だ…

休憩したことで足がお休みモードになってしまった…








ひざがカクンカクンして
足はフラフラだ…






『愛音ちゃん?

大丈夫??』







「うんんん…!
だっだっ大丈夫!!大丈夫!!
でも、吉井君先に帰っていいよ…。

わたしは…ゆっくり散歩しながら帰るよ…」










『何言ってるの?
おいてけるわけナイでしょ??

ほら…乗って!』







私の目の前で背中を見せて屈む吉井君







「いい…いいよ…。

恥ずかしいし…ムリだよ…」







『じゃ、強制お姫さま抱っこにしよーかな……?』








「…それはもっとムリ…。」






えぇい!!







私は意を決して吉井君の広い背中に身を預けた







壊れ物を運ぶようにゆっくりと歩く吉井君







行き交う人の視線をいっぱい浴びたけど…






気にもとめずに歩き続ける吉井君







泣き疲れたのと…

歩き疲れたのと…

心地よい温もりと…

心地よい揺れ…






私はいつの間にか眠ってしまっていた





吉井君に起こされて目が覚めた時には、家の前にいた






途中…
“重いでしょ?”って聞いたら、“そんなことないよ”って言ってくれたけど



子どもではない私の体重は、3駅分も歩くには重すぎるのに…






ずっと、おぶってきてくれたんだ……―







私は、夕闇に消えていく吉井君の背中をいつまでも見守っていた……―。