「グスッ…吉井くん…??」










私服姿の吉井君が
茶色い柴犬を連れて近づいてくる










『どーしたの?

こんな所で…?

学校で何かあった?』







「あっ…これ…

今日は夏休み中の三者面談があって…

制服なんだ…

吉井君こそどーして??」







『俺は塾の夏期講習中だから…

こいつはうちの塾で飼ってる“マル”

俺、課題終わっちゃってさ…先生に散歩行ってこいって命令されたんだ!』








マルがシッポを振りながら舌をだして私にとびついてきた








「かわいい…」








茶色くてきれいな毛並みをしているマルは、小さくて少しぽっちゃりしている









頭をナデナデすると
お腹を見せて、こちらもナデてと訴えてくるマル…












『こいつ…

誰にでも愛想いいんだよ?
世渡り上手ってゆーか、

人懐っこいってゆーか、

怒られてもすぐに立ち直るしさ…

羨ましいよ…』







屈みながら私と一緒にマルをナデナデする吉井君






「フフ…いいな。

私もマルみたいに上手になりたい……―。」







悲しいことも全部、ケロッとすぐに忘れてしまえたらいいのに…









『ねぇ……

三者面談で何かあった?』









「いや、何もないよ…?

志望校は無理って言われちゃったケド…」








『じゃあ…何で泣いてたの?』