『サキはな、別れた奥さんに小さい頃からピアノを習ってたんだ。
だから演奏の仕方が似ていて
マスターも奥さんの演奏と重なって聴こえるんだろう』
「サキさんて…―」
『あぁ。
むかし俺と付き合ってたやつね!
俺がバイトの日はいつも
やってきては
バイトが終わるまでピアノを弾いてた』
遠い目をして
窓の外をみる早坂さん
「へ…へぇ……………。」
私の知らない過去
早坂さんとマスターとサキさんの思い出のこの店
自分だけが部外者なんだと改めて気付かされる
『さっ!!
そろそろ出ようぜ!?』
…………
…………………
…………………………
早坂さん…マスター…
ごめんなさい……
もう少しだけ
知らないフリをさせてください
いつか話しますから
私に少しの勇気がでるまで
もう少しだけ待っていてください……―

