ふぅ…
机に両肘をつけて
ため息をつく早坂さん
『 マスターの奥さんはな… 』
重たそうに口が開かれる
『 マスターの奥さんはな…
ピアニストだったんだ!
それはけっこう有名な人で世界中に演奏しに行ってた』
「行ってた。って…」
『うん…
離婚したんだ…―』
「…………。」
『マスターは店があるから休みはほとんど無しだし、
それはピアニストの奥さんも一緒で
お互いが顔を合わせる時間なんてほとんどもてていなかった』
「…すれ違いから…ですか…」
『詳しくは知らないが、おそらくな…
でもマスターは奥さんのことを愛していた
きっと今も…
酔ったときに愚痴るんだ
“あれ以上いい女はいねぇ”って…』
「奥さん…愛されてたんですね…。」
『あぁ。
この店の名前も
奥さんが1番大事にしているものを…
自分の大切なものにする…
って理由でつけたらしい』
「マスターの大切なお店【PIANO】、奥さんの大切なピアノ…
ほんとだ…
大切なものを共有してるみたい」
『うん。
あのヒゲ面でそんなロマンチックな話し…
似合わねーけどなっ!』
「フフ…。でもマスターかわいい」
『サキのこと探してるみたいだったし…
未練たらたらだな…』
「えっ!?」
どうしてそこでサキさんが……―

