厨房に目をやる






マスターの手には次の一杯がすでに用意されていて、ニヤリと笑うと






グイッと飲み干した






『失礼します』






並々と注がれるワイン






これは、俺たちの飲み方






相手に勧められた酒は飲み干して、勧め返す
それがルール





「早坂さん?
マスターとはどういう知り合いですか?」






『俺が医学生だったころ、この店でバイトしてたんだ』






そう、マスターからの二十歳の誕生日プレゼントは祝い酒だった






その時に教えてもらったルール





………――
…………――…
……………――………





グイッとワインを飲み干す






「早坂さん?
さっきからお料理食べてないんじゃないですか?

ワインばっかり…」






『いいんだ。

おまえがうまそーに食ってる顔をアテに飲んでるんだ!

だからしっかり食え!』






「…へっ?」






顔がみるみる真っ赤になっていく






やべぇ…
さすがに回ってきたぞ…






飲み過ぎというほどではないが、普通に飯食いながら飲む量じゃねぇ!







もう何杯目かわからない






そろそろやめとくか…






と思ったら、店員がワインを注ぎに来ない





マスターを見ると、
片手を振りながら何もなかったような顔をして
厨房に戻って行った







そりゃ勤務中だしな…
あの人が本気で飲んだら俺が適うわけねぇし







やっと解放された






ふぅー。と椅子にもたれかかる







やべ……




ねみぃ………zzz