スイッチ

この頃から決して裕福とはいえない暮らし。
お祝いのケーキの代わりに両親と家の前で、町の写真屋のおじさんが箱に黒い布を掛けて、『はい、早く笑って!』と叫んだ事が、おかしかった。
いつの間にか父も母も、兄だけが大切なんだと思う様になっていった。
兄は勉強も出来て、育ちのいい綺麗な奥さんを娶り、いつだって父と母の期待を裏切った事は無かった。
そんな兄に嫉妬したというより、早く逃げ出したかった。