[短編]アスタラビスタ




「……アスタラ…ビスタ…」



涙の粒が便箋の上に落ちて、文字がにじんだ。



「涼ね、急に進路を変えるって言い出したのよ」


「…え?」



私が読み終わるのを見計らって、涼のお母さんが話し出した。



「あの子、地元で就職するって言ってたでしょう。それが…ハルちゃんが引っ越すってわかってから、急に変えるって言い出したの」


「……」


「…東京で就職するんだって」


「東京で…?」



そんなこと、知らなかった。
涼は一言も言わなかったから…