ど、どうしよう・・。
周りのスタッフたちは、必死に動き回っている。

でもあたしは、何をしたらいいのかわからない。


輝は一体どんな気持ちであの場所に立っているんだろう。


ファンたちのざわめきが、あたしを余計に不安にさせる。


みんな、楽しみにしてたのに。輝も・・、新しいRを作るんだって、いい初日にしたいって、意気込んでたのに。


無意識に拳をぐっと握りしめた。


失望させちゃ、ダメだ。

輝を助けなきゃ。

あたしは、通しスタッフでもあり、輝のファンでもあるんだから!


そう思うのと同時に、あたしは走り出した。

「優美ちゃん!?」

堂本さんの声が聞こえたけど、気にせずに客席へ出られる通路へと走る。

あたしがファンのままだったら、今日客席にいたら、きっとこうするから。


細く狭い通路を走り抜けて、バッと客席へ出ると、そこはアリーナ席の中間の部分だった。

ファンのみんなはいまだにざわめいている。

「なにこれどうなってんの!?」
「なんかの演出かなぁ?」
「輝はぁー!?」
「ちょっとマジありえないんだけど!」

近くで聞くとわかる、ファンたちの不満。


でもファンなら・・、Rが本当に好きなら・・、こんなときこそ、本領発揮しなさいよ!


あたしはすうっと息を吸い込むと、大声で歌いだした。




だけど君を見つけた



世界が光で輝き出す
まばゆいほどに美しくなる

僕は目を開けられなくて
だけど君の手の温かさは
絶対に嘘じゃない


夢ならば覚めないで