「悠ーっ!!」
「悠くーん!!」

音楽だけで誰の曲かわかっているファンたちが、叫び出す。

一気に暗くなる照明。溢れ出す無数の小さなライト。一筋のスポットライトが、クールな衣装に身を包んだ悠さんを照らし出した。


輝がステージからはけて、降りてくる。

輝のソロパートは最後だから、まだ余裕がある。栄養補給のために、まず水とバナナを渡した。輝はどうやら、バナナが好きらしい。

タオルを渡すと、輝は「さんきゅ。」と言ってそれを手にとった。

「どうだ?」

堂本さんがサッと用意したイスに座った輝が、あたしに聞いてきた。

「え?なにが?」

「楽しいか?」

「う、ん。楽しいけど・・必死かも。」

あたしは苦笑いで答えた。

「やってくうちに慣れるだろ。お前よくやってるよ。」

「本当?」

「ああ、その調子で最後までやり切ろうぜ。」

輝は立ち上がり、食べ終えたバナナをごみ箱に捨てた。タオルで自分の汗を拭き、衣装を脱ぎ始める。

「輝。さっきの・・、なんかよかったよ。」

その背中に語りかけた。

「さっきの?」

輝が怪訝な顔で振り返る。

「最後に、ファンに向かって言った言葉。普段輝、あんまり自分の気持ち言ったりしないから、あたしも一ファンとして、なんかすごく感動しちゃった。」

「・・そうか。」

輝は一瞬目を見開いた後、ふっと安心したように笑った。

「きっと、今日来たファンは幸せだよ。」

「なんでだ?」

「だって、Rが新しく変わる瞬間を、見られるんだから。」