そしてとうとう、俺達Rの全国ツアー初日となった。

すでに開場して、ファンたちが続々と会場入りしている。楽屋にいてもわかるざわつきに、俺は武者震いを覚えた。


今日を終えたら、新しいRが始まる-------。


そんな予感が、俺の胸の中を占めていた。


すると、楽屋のドアがコンコンと鳴った。

「誰だ?」

「あの・・優美です。お弁当、持ってきたよ。」

ドア越しに声を聞いて、自分でも驚くほど気持ちが温かくなるのがわかった。

「今開ける。」

楽屋の鏡を見て、少し身なりを整える。私服姿で優美に会うのは初めてで、少し緊張した。


「あ、おはよう、輝。」

「ああ、はよ。」

ドアを開けると、優美はにこやかに笑った。

化粧っ気もない、本当に普通の顔なのに、俺にはそれがひどく、綺麗に見えた。

「これお弁当。ちゃんと腹ごしらえしてね。」

優美は楽屋の机の上に、抱えていた弁当を置いた。その後ろ姿を見つめる。

「眠れたか?」

「んー・・あんまり、眠れなかった。緊張しちゃって。」

優美は苦笑する。

「不安もあるし。ちゃんと出来るかなーって。」

「それはお互い様なんじゃねーの。俺だって不安だし。ベテランのスタッフだって、不安なんじゃねーかな。」

「え?そうなの?」

優美は目を見開いて、聞き返してくる。

「今までとは規模が違うからな。期間も長えし。初日がうまくいくと、あとのステージもいい気分でやれるもんだから、今日にかける気持ちは、すげーあんじゃねーかな。」

「・・そっか。」

「だから、同じだよ。俺らも他のスタッフも、ビビってる。でも、やるしかねーからな。」