「ケイ、悪いけど、あいつは駄目だ。」

「は?なんで。」

ケイは、唐突な俺の言葉に、戸惑った表情を見せた。


「あいつは、俺が気に入ってるから。」


自分でもはちゃめちゃなことを言ってると思う。
だけどあいつは、俺が最初に見つけた女だ。

ライバルがいようが、絶対に渡さない。

「・・へえ、なるほどね。」

ケイはしばらく黙っていた後、満足そうに頷いた。

「輝、そういう表情するんだな。初めて見たよ。」

そういう表情・・?

自分がどんな表情をしているか、なんてのはわからないから、何とも答えようがない。

「ま、仕方ないから、友達の輝をここは立てることにする。」

ケイはにっこりと笑った。その顔に、安心感が沸き起こる。と同時に、この業界で「友達」って言葉を聞くことに、何だか照れ臭さを感じた。

「優美ちゃんのこと、好きなんだ?初恋か?」

「・・・うるせーよ。」

そこまでは、言えない。恥ずかしくて言えるか、そんなん。

「はは、輝にも春が来たんだな!いいじゃん、優美ちゃん。応援してやるよ。」

ケイは明らかに俺の態度を面白がって、背中をポンポンと叩いてきた。

「なんだよその上から目線は。」

「だって輝よりかは俺の方が、恋愛偏差値は上だぜ?」

「ふざけんな。てか、優美ちゃんってのもやめろよ。」

「わー、もう彼氏気取りかよ?束縛とかやめろよ、嫌われるぞ?」

「うるせーっての。」


こんな会話を、自分がすることになるとは・・。
今なら恥ずかしさで死ねそうだ。

でも、不思議と嫌じゃない。


初めて知ったこの感情は、予想していたよりずっと、心地よかった。