「・・と、この女の子は?」

すると、ケイは俺の背中にちょうど隠れて立っていた優美に、気がついたようだ。

「あ、噂で言ってた、あの公募してたやつ?」

優美の雰囲気で、こちらの人間ではないと察したらしい。ケイは俺にそう聞いていた。

「ああ、笹本優美。俺の通しスタッフだ。」

「へえ~・・・、本当に普通の子?」

優美は訳がわからなさそうに、俺を見ている。

優美くらいの歳の女が、ケイの顔を見て騒がないのは珍しいな・・。
優美だってさすがに知ってるはずだ。

緊張してんのか?

「ああ、全くの一般人だよ。」

俺はとりあえず、ケイの質問に答えた。


「へえ・・・、可愛いね。」

「え!?」

するとケイはいきなり、そういって優美の頭をポンと撫でた。

想像もしなかった展開に、頭が真っ白になった後、一気に顔に熱がこもった。

「ケイ、からかうな。」

なんとか声を押し殺して、ケイの腕を引っ張った。

「からかってなんかないよ。本当に可愛いじゃん。」

ケイは俺の苛立ちに気づく風もなく、そう返した。
その笑顔に、俺は何も言えず押し黙る。

ケイは、良くも悪くもマイペースでもあり、好き嫌いがはっきりしてる。

だから俺の感情に気がつかないのも、なんら不思議はないし、いつもは俺だって気にもとめない。


だけど、優美のことになると、やっぱり駄目だ。

なんでなんだ?

自分でもわからない。最初はこんなんじゃなかったはずなのに。

気づきたくない気持ちが、もう意識しないでもわかるほど、溢れそうになっていた。