裏から客席の方へと回る。


・・あ、いた。

メインステージが一番よく見える場所に、輝は座っていた。前をじっと見据えている。その目は、何か怪しげな光を放っていて、力強い。


・・やっぱり、かっこいいな。


こうして遠くから見ていると、ファンだった頃の自分を思い出す。でも、憧れでしかなかったあの頃よりもっと、輝への憧れは、強さを増している気がした。

今、普通に話し掛けられる距離にいる。

そのことが、やっぱり奇跡のように思えた。


ゆっくりと、輝の方へ近付いていった。すると、輝も気づいてくれたらしい。
ふと、目が合った。


輝は一瞬目を見開いて、だけどそのあとフッと笑ってくれた。

その笑顔に、やっぱり胸が高鳴る。

昨日、百合があんなこと言ったから-------。

そんなふうにも思ったけれど、でももう、確信していた。


あたしはきっと最初から、輝に近づきたくて、ここに来たんだ。


輝が席から立ち上がって、こっちへ歩いてくる。


「優美、今日は少し遅かったな。」


目の前まで来ると、笑って、頭をポンと撫でた。



・・・もう、どうしようもないかもしれない。


こんな気持ち、きっと駄目だけど、きっと言えないけど、

でももう、認めるしかないかもしれない。



輝。

もっとあなたに、近づきたいよ--------。