「お母さん、あたしね、今バイトしてる。」

「・・え?」

お母さんが、こちらを驚いた顔つきで振り返った。

「・・なに言ってるの。」

「どうしても、やりたかったの。アイドルのコンサートの裏方のバイトをしてる。春休み、夏休みだけだけど。」

「優美、冗談やめて。あんた生徒会長でしょう。」

放任主義のお母さんが、久しぶりに怒った顔をしている。怯んでしまいそうだけど、負けない。

「百合と健人が協力してくれてるから、学校側に漏れる心配はないよ。」

「そういう問題じゃないでしょう!」

「今やらなきゃ意味がないの!」

とうとう怒り声を上げたお母さんに、あたしも声を上げた。
めったに大きい声など出さないあたしに、お母さんは驚いている。

「どうしても、やり遂げたいの。だからお願い、最初で最後のわがまま、聞いて。あたしを信用して、お母さん。」

お母さんの目をしっかりと見ながら、そう伝えた。

うまくやり遂げられるかどうか、不安はあった。
だけど、秘密を守ってくれるといった輝との関係を、今まで費やしてきた2週間を、ここで終わらせたくない。


「・・・わかったわ。放任だった私にも責任はあるわね。」

長い沈黙の後、お母さんはそう呟いた。

「優美がそこまで言うの、初めてね。頑張りなさい。」

「・・うん、ありがとう!」


やっぱり、言ってよかった。


お母さんの言葉を聞いて、あたしは心底そう思った。








メインステージの裏に入ると、もう他のスタッフは動き始めていた。

あたしは輝の姿を探す。

昨日のお礼も言いたいし・・。